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再発させない働き方とは




 どうも。元熱血教員で不祥事教員、現社会福祉士でピアサポーターのぬっぺふです。

 不祥事を起こし、懲戒免職となった方も停職となった方も、生きていくためには再度働いていかなくてはなりません。しかし、その際気を付けないと環境が変わってもまた同じ過ちを繰り返してしまうことも。

 そこで、今回は「再発させない」ためには仕事のどのような点に留意しなくてはならないのかを考えていきたいと思います。

 なお、この内容は予備軍にとっては「初発させない」にそのまま代用可能だと思って下さい。ではいってみましょう。

 




 

1.モデルケースから考える

 

 以下のケースは、私が実際に見てきた人々から作成したモデルケースです。それぞれが不祥事を経験してからも仕事に復帰したケースを3つ用意してみました。

 

 ①環境を変えたにも関わらず同じ問題を繰り返してしまった教諭

 A氏は爽やかなイケメンスポーツマン。元々公立学校で働いていましたが生徒との恋愛関係を機に学校への居場所がなくなり、私立高校へ転身しました。人当たりもよく、積極的な彼は新しい環境で前向きなスタートを切ったように見えましたが、やがて同じ問題を繰り返してしまいました

 

 ②懲戒後、積極的に仕事をしたものの現場に馴染めきれなかった教諭

 B氏は真面目で負けず嫌い。生徒指導含めビシッと決めたい中堅教員。そんな彼は情報流出で懲戒を受けることとなってしまいます。

 その後、職場に復帰した彼はメールやUSB含め情報は一切学校外に持ち出さなくなりました。また、転任先の学校では部活動・生徒指導ふくめ積極的に活動しました。しかし、転任先の学校の持っていた空気感になじめず次第に孤立、元気をなくし早期に異動していきました。

 

 ③懲戒後、より自身の信念を強めてしまった教諭

 C氏はいわゆる熱血教員。行事も部活も教材研究も全てに本気で、私生活をなげうって教員という生き方をしている人物でしたが、生徒との感情の行き違いから「体罰を受けた」と告発され、本人も「事実である」と覚悟の上での停職期間を過ごしました。

 その後、彼は停職期間を次へのステップとしてスキル習得に励み、次の学校では学校の中心人物となっていきましたが、一方で「生徒を車で送る」「自腹をすぐに出す」といった境界線を越えた行動が多くそれがその学校の多くの若手に伝わることにもなりました。彼は「いざとなったら辞める」の覚悟のもとグレーゾーンを恐れず攻めていくようになり、取り巻きから尊敬されるとともに、いわゆる普通の教員からは「彼のせいで仕事がしにくい」「パワハラ気質」と言われる面もありました。

 

 …さて、以上の3つのケースではそれぞれ不祥事に対する動きとして何らかの対応を行っています。簡単に概括してみると以下のような形です。

 

人物

不祥事後の変更点

結果

A氏

環境をかえる

再発

B氏

情報流出をしない方法の徹底

積極的に仕事をする

周囲との不一致、精神的不調

C氏

自分磨き

辞める覚悟を持つ

カリスマ&パワハラ教員化

 

 この3つのケースから学べるものは何でしょうか。事項ではそれを考えていきたいと思います。



 

2.モデルケースの問題点

 

 まず、A氏は「環境を変える」ことで状態のリセットをはかりました環境を変えることは問題の原因が外にある場合は有効ですが、残念ながら彼の場合は自身の内にあったのでしょう。彼に欠けていたのは【自身を振り返る期間】です。


 こうしたケースは依願退職の形で決着がついたりと決定的なダメージ(一般的には底つきとよばれます)を受けずに済んでしまったケースで起きがちです。なまじ次の働き先があるために【自身の振り返り】よりも【仕事の準備】といった日常生活に視点が置かれてしまう。結果彼は自身の問題点を振り返るよりも、自身の過去を周囲に悟られないよう振る舞わざるを得なくなってしまいました


 

 ではB氏はどうでしょうか。彼は自身の振り返りを行い、結果【物理的な対処法】をしっかりと確立して次に臨みました。そういう意味で、①のケースよりも準備をした上で次の現場へ向かっている。

 一方で彼は自身の起こした問題行動そのものは振り返ったものの【それ以外の自分の分析】には時間を割けていなかった印象があります。根本的に真面目で負けず嫌いな彼は次の現場において「成果を出さねばならない」という焦りを抱えていたようにも見えました。実際は、その焦りこそが不祥事の原因となる本人の根本的な問題だったのかもしれないにも関わらず。

 …不祥事を起こしてしまった方はその汚名を挽回しようと、次の現場で必要以上に頑張りすぎてしまうことがあります。彼の場合もそうした背景が重なり、本来重要な「異動先ではまず様子を見る」を飛ばして自分流の動きを始めてしまっていました。結果、焦れば焦るほど周囲は彼から離れていき、自信を失えば失うほどより過剰に自身の指導に打ち込んでいくという悪循環にはまってしまいました。


 

 

 最後にC氏はというと、不祥事を機に【自身の信念が固まってしまった】印象があります。つまり、「周囲は問題というかもしれないが、俺は生徒にとって必要なことをやっているのだ」という信念です。口癖の「いざとなったら辞める」はそうした姿勢の表れです。

 極論を言えば、彼は自身の不祥事を後悔していませんでした。彼の中で不祥事は「自身が成長するきっかけ」と位置づけられてしまったのです。

 結果、C氏いわゆる劇薬のような教員となりました。強烈な個性を持ち、多くの生徒や教員に影響を与える存在。彼だからこそ救えた生徒も多数います。一方で、彼の「グレーゾーンをいとわない」姿勢が若手に与えた影響や、彼に受け入れられなかった普通の教員達に与えた影響も見逃すことは出来ません

 

 

3.陥りがちな問題点の整理

 

 不祥事とは、その場その場のミスで単発的に起こってくるものではありません。そこに至るまでには様々な積み重ねがあり、場合によっては自身の成育歴までさかのぼる必要があるケースもあります。

 そうした事実を知らずにいると、不祥事後の仕事復帰では以下のようなことを考えがちです。

 

①環境が変わったから前のようなことは起きないはず!


②罪滅ぼしのためにも人のために尽くすんだ!


③汚名挽回しなくては…


④周囲にまずはちゃんと信頼してもらわなくては…!


⑤周囲が理解してくれなくてもかまわないぜ

 

などなど。


 …まず①については思考が他責的です。この感覚でいれば再発は必須。当然、環境を変えることも大切ですが、自身の中に問題につながる因子はないのか?その目線を持ち続ける必要があります。


 次に②、③、④のタイプは形は違えど皆優先順位を間違えています大切なのは人に尽くすことでも汚名挽回でも信頼を得ることでもなく、【再発させないこと】なのです。逆に言えば、心の隅で「もうあんなことはない」という油断があると言えるかもしれません。

 こうした思考法で仕事をしていると、大体頑張りすぎてのちのち苦しくなってきてしまいます。そしてそうした状況は不祥事や精神疾患といったものを寄せ付ける土台になってしまう。結果的には悪手です。


 そして⑤。このタイプの場合、不祥事を機にその人が持っている行動パターンが強化されてしまうことがあります。いわゆる「パワハラ」「カリスマ」といったタイプが陥りがちです。こうした方はものすごい推進力を持っているため、結果大きな成果も出しがちですが、その陰に隠れて「パワハラ」の因子を学校内に蔓延させてしまったり、普通の教員が働きにくい職場の雰囲気を作ってしまったりすることがあります。昨今増えている部活動における体罰やパワハラが問題視される教員には同じような精神状況が見えたりします。

 



 

4.具体的な対処法3選

 

では、こうした思考に陥らないためには何を大切にすべきなのか。それは基本に立ち返ることです。つまり「不祥事を再発させない」ために何をすべきか、何を整えるべきかを最優先事項にするのです。業務外の部活はこの際放っておいてもかまいません。仕事ができないやつと思われてもいいのです。

 具体的には以下の点はポイントになってきます。

 

☆1 前回の棚おろし(自己分析)がしっかりと出来ているか?


☆2 つらい気持ちを吐き出せる場所はあるか?


☆3 自己正当化していないか?(環境のせいなど)

 

 これらの点が不十分なのであれば、仕事なんか本気でしている場合ではありません。仕事の点数を減らしてでも、こうした部分にしっかりと取り組むべきです。

 

 そうは言っても人目は気になるし、それなりに無茶しなくてはならないときもあるでしょう。そこでぬっぺふのおすすめする対策は以下の3つです。

 


 

 ①目先の評価にとらわれない

 今の評価ではなく、5年後、10年後の評価を大切にしましょう。優等生が悪さをするのとヤンキーが捨て猫を助けるのを考えれば、最初に優等生になりすぎることが決していい結果にはならないことはイメージできるはず。最初は「微妙」くらいからでも大丈夫です。

 どうしても短期的な評価を捨てられないのであれば、なんでもかんでもは求めず自分の勝負所をしぼっていきましょう

 …ここまで言っても「そうはいっても…」となる場合は、貴方の内面に「過剰なプライド」や「過度の見捨てられ不安」といった生きにくさの素がある可能性を視野に入れてみてください。自身の幼少期を振り返ると、なぜそこまで「人に嫌われたくないのか」の理由が横たわっていることもあります。

 


 

 ②安全基地の確保

 子どもは少し周囲を探索し、不安になると親のもとに戻って愛情を補給します。こうした絶対的に安心できる場所が「安全基地」です。同僚の中に見つかるのが理想ですが、実際のところ難しい。そこで、友人や家族、それでも見つからなければサークル活動やカウンセラー、医療機関…ともかく職場から視野を広げて安全基地を確保してみてください。

 ぬっぺふの研究上、不祥事は閉じた環境の中にいると醸造されることが多い印象。職場の外に定期的に連絡を取り合える関係を持つことはとても大切です。

 


 

 ③クライシスプランの作成&信頼できる第三者との共有

 クライシスプランとは、精神病患者が再発の兆候や病状の悪化を防ぐために作成する書類で、有名なものにはWRAP(元気回復行動プラン)があります。

 詳しくは実際に検索して書式を見てもらうのが一番なのですが、自分の調子が悪くなってきたときに起きる兆候、そうした際に必要な対処法、つなぐべき連絡先…などを1つのシートにまとめ本人と医療者で共有するというのが趣旨です。


 例えば、前回自分が不祥事を起こしたとき、自分はどんな状況でしたか?いつもよりも食欲が減っていた?あるいは増えていた?仕事以外に悩みを抱えていなかったか?睡眠はしっかりとれていたか?


 …人間は動物なので、体調の影響が精神にも表れます。逆に言えば、精神に影響が出ているときは身体上…表面からでもわかる変化があったりします。こうした兆候は自分を探れば探るほど見つかってくるものです。

 

※たとえばぬっぺふの場合は調子が悪くなると前髪が必要以上にうっとうしく感じ出します。いつもなら3つを同時にこなそうとすると限界がくるのが、2つを同時にこなすので限界になってきたりします。音に敏感になることも。こうなってくると精神がささくれているので、服薬か静養が必要です。

 

 大体の不祥事はストレス過多な生活の中における「対処法」としての側面があるとぬっぺふは考えていますが、これはつまり自身がストレス過多な状態であると認識し、適切な回復のための行動をとれば衝動的な不祥事は避けられるという考えにもつながります。

 

 どんな時が危険なのか。それを探り出来れば信頼できる人に共有しておくことです。追い詰められているときは人間視野狭窄となり自分のことはよくわからなくなるもの。かといってそうした状況の時に無理解な言葉を投げつけられれば回復どころか悪化してしまいます。

 自分の手綱を自分だけで取ることを諦め、第三者の助けを頼るのは、不祥事防止のためには有効な考え方です。第三者を巻き込むことで「裏切れない」という感情が不祥事防止に寄与することもあります。

 


 

5.おわりに

 

 さて、今回は再発防止のための働き方というテーマでまとめてみました。結論を言えば無茶するな、自己分析を続けろ、協力者を得ろというシンプルな答えなのですが、「なぜそれが必要なのか」を段階を追って伝えたいと思い書いていたところ例のごとく長くなりまして。

 ※しかもあくまで働き方に重きをおいたため、どのような「職を選ぶべきか」については触れられませんでした…。それについては、次回に取り扱おうと思います。

 

 とうぜん、ここで挙げた答えが真理とは言いません。ですが、「孤独」は「不遇感」に、「不遇感」は「不祥事」に繋がりやすいということは事実です。安全基地が大切なのはそうした理由ですし、不遇感につながるような働き方が良くないのも同様です。

 当「不祥事教員および予備軍のための座談会」は、そうした悩みを抱える不祥事教員&予備軍の安全基地として機能したいと思い設立されました。ぜひ今度は皆さんなりの「再発防止のための働き方」を考えて、当座談会で発表して頂ければと思います。

では、またいずれ!

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