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加害を防ぐためにグループワークって効果あるの?の巻



どうも。元熱血教員で不祥事教員、現社会福祉士でピアサポーターのぬっぺふです。


今までは1万字を超えるような記事ばかりだったのですが、さすがに仕事をしながら大きな記事を更新していくのは骨が折れる作業だったこともあり…

もう少しシンプルな内容で更新頻度を増やそうと画策しています



ということで、今後はぬっぺふが毎月通っている性犯罪加害者のグループワークを通じて気付いたことや思ったことについても備忘録を兼ねてまとめていくつもりです。





ですが、その前に。

「そもそもグループワークってよく研修とかでやる話し合いみたいなものでしょ?そんなのが効果あるの?」という方もいるかと思います。


なので、今回は導入として「性犯罪加害者のグループワークって効果あるの?」という話を再度まとめておこうと思います


では行ってみましょう。




 

1.そもそも性犯罪加害のグループワークってどんな場所?



一言で言えば、何でも話せる場所です。


まず、グループワークの目標は「被害者を出さないこと」となります。

そのために、やったことや思っていることを正直に言葉にし、他者が語った内容についてはしっかり耳を傾け、意見を持つことや共有することは大切にしつつも他者の発言を批判しないことが求められます。




 皆さんも覚えがあるかと思いますが、話すべきか真剣に悩んだ内容を口にできるかどうかに大きく関わるのは「安心感」です。言葉にしたことがちゃんと伝わる前に評価したり批判してきたりする人が世の中には案外多い。それでは本質的に敏感な部分を持っていることが多い「性犯罪加害者」は本心を口にできなくなってしまう。


 口に出さなかった思いはどうなるかと言えば、心の中に押し込められてゆっくりと発酵していくわけです。


 


 発酵の進み方によってはうまく消化できることもありますが、手入れされないぬか床がカビるように、大体の場合は良い方向には行きません。時には妙なガスが発生し、大爆発することも。

 ※心にしまわず、外に捨ててしまえば消化もされませんが毒にも変わりません。これを人は「忘れる」と言います。ですが、往々にして性犯罪加害をする方は不快な記憶を忘れることが苦手でずっと毒を溜め込みがちです。


 グループワークはそうした思いを早めに外に出し、外気にふれさせ、さらに他者の意見という新しい菌を取り込むことで「自分で消化可能な形にして栄養に変える」手助けをしてくれる場所と言えます。

 

 たかが対話、されど対話。そうして対話を続けることで心の膿が犯罪に繋がる前に消化する=加害者を出さないことに繋がるわけです。


 

2.グループワークと心理学


 さて、グループワークのように安心して自分の心の膿を外に出せる場所があることは、実は本人の意識の面にも大きな変化を生み出します。ここでは知名度の高い2つの心理学用語、「ジョハリの窓」と「ABC理論」の視点からその変化を説明してみましょう。



①ジョハリの窓の視点から



 ジョハリの窓は社会の教科書でもよく取り上げられる概念です。人の内面を4つの枠に仕切られた窓になぞらえて説明します。


 前提となるのは、「人のことを100パー理解するなんて、周りにも自分にも基本無理やで」という感覚です。人は自分の暗部を他人には見せないようにするものですし、自分の体の中や背中は他者からじゃないと見えないから

 

 図をもとにして言うと、右下の窓は常に「謎」となっています。そして、問題の大元はこの「未知の窓」からやってくることが多いのです。


 ではこの未知の窓の中を探ることは出来ないのか?…そのために必要なのが「自己分析」と対話を軸とした「他者との関わり」


 自己分析と対話を軸に自分の知らない自分を減らしていく。他者と関わる中で他人が知らない自分を減らしていく。この2つが機能すると、下図のように未知の窓は縮小していきます。



 結果、自分の中にあるものが見えやすくなるために、


「なぜ悪いとわかっていることをやってしまうのか」

「なぜ自分はその行為に惹かれるのか」

「なぜそれじゃなきゃダメだったのか」


 等犯罪に繋がるメカニズムが掴めるようになってきます。



 

②ABC理論の視点から

 

 以前別の記事でも取り上げましたが、エリスという学者の唱えた「ABC理論」というものがあります。要約すると以下のようなものです。

 

・人間は物事を認識し、それに対応して行動する

・つまり同じ物事であったとしても、それをどう認識するかで行動や結果は変わる

・問題を抱えている方の多くは、「イラショナルビリーフ(誤った信念)」を持ってしまっており、認知が歪んでしまっている。

 

 例:街で貴方を見ている男がいる

   →喧嘩を売られていると思う

   ⇒「おい、何見てんだよ」


   街で貴方を見ている男がいる→

   自分の近くに友人でもいるのかと思う⇒

   周囲を見回す


 ※同じ出来事であっても、それをどう受け取るかは変えられる。

 

・「イラショナルビリーフ」を「ラショナルビリーフ(正しい信念)」に変えていくことで問題の改善をはかれる



 さて、このイラショナルビリーフを作りだしているのがジョハリの窓で言う「未知の窓」の中身だと思ってください。

 GWでは対話を通じてイラショナルビリーフ(思考の枠組みという意味でスキーマということもあります)を修正していくきっかけを沢山得ることが出来るのです。



 

3.今回のまとめ


 ということで、ここまでの内容をまとめます。


①性犯罪加害者のGWとは「安心して何でも話せる場である」


②自分の暗部をさらけ出し、それについて他者の意見を聞いたりすることで「消化」しやすくなる


③ジョハリの窓で言うなら、GWを通じて自己分析が進んだり、他者の視点を取り入れることが連鎖することで自分も他人も知らない「未知の窓」が減っていく


④ABC理論でいうなら、自分の中の「間違った信念(=イラショナルビリーフ)」に気付き修正するきっかけを得ることになる


…いかがでしょうか。たかが対話、されど対話。正しい形で行われる対話の持つ+の影響力は絶大です


 特に、GWには自分と同じような「底付体験」をした人や「生き辛さ」を抱えた人が「問題を起こさず生活している」姿に出会うことができます。

 これは、今まさにどん底を経験している最中には大きな希望となるわけです。


 心理学的にはGWの効果は、集団そのものが持っている力(=集団力学)によって一人では困難な変化に立ち向かいやすくなることや、フロイトの力動論、ナラティブセラピーの視点、様々な理論でその効果を説明することはできますが……。案外一番重要なのは「希望」を与えてくれることかもしれません。



 

4.次回予告


 さて、今回は短めにするという目標だったのでこの辺で切ります。

 次回以降は、ぬっぺふが参加したグループワークで考えたことを回ごとにまとめてみようと思います。


 では、またいずれ!

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