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小金のために文化が壊れうる?…動画制作の怖さ


どうも。元熱血教員で現不祥事教員のぬっぺふです。

本当に久しぶりのブログ更新とあいなりました。

この1年ほどの間にどうも世の中色んなことの綻びが露呈し始めた感があります。

汚職、性加害、増税に次ぐ増税…こうした歪みを直に受けるのはいつも弱い者達です。


なぜこんなにも急速に悪化していっているのか。今回はその一因として、『小金を手に入れたい動画制作者』の動向を考えてみたいと思います。


では、いってみましょう。


 

1.考えるきっかけはずんだもん


 きっかけは、YouTubeに急速に増殖し始めたある動画でした。緑色の可愛らしいキャラクターが様々な会社や個人のやらかしを解説する動画…いわゆるずんだもん動画です。



 たしかにずんだもん、見ました。沖ノ鳥島を巡る歴史の動画、興味深く拝見しました。

 それにしても、異常な更新速度とオススメに挙がる率。

 「なんぞこれ?」

 と思っていました。しかも上記の写真を見てもらえばわかるようにほぼ似たような作りにも関わらず、作成者は別アカウントなのですね。


 この時点で、「ははーん、ゆっくり解説動画と同じように誰かがお金を払って作らせている動画なんだろな」という印象はあったのですが、異常な急拡大にイマイチ細かな動きが見えずにいました。

 そんな折、ある動画がその動きについて解説してくれていたのです。



2.ずんだもん動画増殖の背景

 内容については是非動画を見ていただきたいと思うのですが、簡単にまとめると以下のような内容です。

 

①大本の雰囲気はあるずんだもん動画チャンネル

②それがTwitter(X)等で「今収益につながる動画作成の方法」として取り上げられる

③結果、クラウドソーシング等で「あのチャンネルっぽいやつ作って」と安価で大量生産始まる

 ※なお収益化が見込めたチャンネルはその権利が数万円で売りに出されたりしている

④さらにえげつない方法として、「収益化できる動画の作成方法教えます!」といった いわゆる『情報商材』として金を稼ぐ輩も排出

⑥ずんだもん大増殖☆

 

 なぜずんだもんなのか?なぜやらかしてしまった個人、会社等を扱うことが多いのか?素材だけではなく構成までもが告示する理由は?結局答えは『受けが良いらしいから』。自分で考えて傾向を探り寄せていく…というよりも予め存在するガイドブックにそった結果似たものが増えていくという流れ。


 無論、これがすべてにあてはまるとは言い切りませんし、中には強い思いをもって「自分が伝えたい情報をキャッチーにわかりやすく伝える方法」として動画作成をしている猛者もいるでしょう。昔はそれが動画共有サイトの基本スタイルだった。ぬっぺふはその経緯をリアルタイムで見ていた世代故か、どこかで「別のアカウントだけれど、同じスタイルなのは大元の元締めがいて、リスク分散や利益効率化のためにフランチャイズのようなやり方をしているのかな」というようなトップから末端への上意下達のようなシステムで拡大しているのかと思っていました。でも、実際はそうではなく「金を稼ごうと考える個々の打算的な選択がこの状況を作っている」というわけでして。


3.小金稼ぎの問題点


 当然、メディアというものは常に顧客の求めるものを提供してきました。それは事実。ただし、今ネットで起きている流れはそれと似て非なるものと思うのです。出版にせよTVにせよ映画にせよ、かつてのメディアはそれで生計を立てて行く人達によって支えられていたのに対し、今回の流れは「小金を稼ぎたい人々」が作り出しているという点。

 場合によっては数億単位の金額が動く旧メディアと違い、一般的な再生回数の動画作成であれば一件で数千円、チャンネル売買なら数万円。広告収益で稼ぐにしても月数万。この金額で生計を立てていくのはまず無理です。動画作成は、多くの人にとっては副業としては魅力的ですが本業として稼ぐには向かないと言えます。すると何が起こりうるか。それは『今金になれば良い』という考えです。


 1つの業界で生計をたてていくことの難しさは単発の成功よりも事業の継続性です。ニーズにのっとり過激な内容で一時の利益を見込んでも、そこに光るものが無ければ人気は低迷していきますし、偏った思想や誤った情報をねじこめば不信感につながります。この先も継続して稼ぐためには、それなりの質を確保しなくてはなりませんし、情報の発信にも慎重になる必要があります。


※学研の某オカルト雑誌や右派系の雑誌はじめ怪しい本は色々あるだろうが!という声もあるかもしれませんが、前者はその類の雑誌としては他の追随を許さない専門性があります。科学的には誤っているかもしれないけれど、オカルトや超科学、ロマンとしては一級の情報を扱っているのですから文句の付けようがありません。一方、後者についても政治情報誌というよりも「特定の団体へのファンブック」という視点で見れば、客観的に多少誇張や問題があったとしても十分ニーズを満たしているといえます。


 ところが、最初から小金を稼ぐことが目的の個々の動画作成者にはその「長期的な目線」はまだありません。あるのは動画作成で収益を得るために「いかに再生数を稼ぐか」という視点。長期的にチャンネルが続いていけばそうした人々もプロとしての目線が強くなっていくのかもしれませんが、結局また新たな小金稼ぎが現れるので、結果ネット上には似たような動画が乱立することになります。それらの動画には継続性は後回し。プロのような専門性は必要ない。むしろ大切なのは大衆性。極論を言えば情報の正確さも必要ない。断言せず「という説もあるんだぜ」とでも入れておけば何か追求されても「ネットの記事を元にした」と言えてしまうところがある。そしてここからがタチの悪いところですが、万が一やりすぎて炎上したとしても有象無象のチャンネルの1つが潰れるだけなのです。アカウントを潰してまた新しくやり直してもいいし、所詮副業なのでめんどくせえとほっぽっても構わない。騒ぎをおそれて情報の質を上げるために努力をする必要がない。結果、全体の精査が進みにくい。


 …かつて、カストリ雑誌と呼ばれるうさんくさい雑誌が乱立した時期がありました。戦後まもなくの頃です。カストリという強烈な酒にちなみ「3合(号)で潰れる」という雑誌ばかりで、中身は卑猥、猟奇、真偽の怪しいスキャンダル等まさに「先のことよりも今の利益」を求めた内容でした。今令和の世で起きている現象はより広範に、気軽に、数多く乱立するという意味ではカストリ雑誌以上の状況なのかもしれません。


4.今後警戒すべき点


 さて、ではこうした流れをなぜぬっぺふが危惧するかについてです。例えば、こうした流れがサブカルであったりエンタメの中に収まっている分にはまあ構わないのです。今で言えば推しの子が流行したら、皆がそれを元にMADなり歌ってみたなりを投稿する。これはまあ害はない。注意すべきは、政治的なものでこの流れが起きている場合です。


 例えば、ずんだもん動画と同時期にオススメに挙がりだしたものの中に「安芸高田市市長VS市議会」の動画があります。


 上記のリストは市長の名前で検索したものです。というのも、あまりにも頻繁に上がってくるので片っ端からチャンネルごと表示されないようにしてしまったので…

 実際に動画タイトルを見てみると、#安芸高田市とあり一定の人気が集まるジャンルとなりつつあるのだろうということが想像できます。これらの動画をアップしているチャンネルについてプロフィールを確認するとここ1年以内に開設したページであったり、政治について取り扱うと書かれていながらアップされているのは【石丸市長】のみという極端なチャンネルもあります。ここ9日の間にアップされた動画8本のみで5000人以上のフォロワーと十数万という再生回数を稼いでいるものもありました。本当に政治について意見をまとめていきたいのならば全国各地に散らばるニュースをまとめて自身の意見を交えて動画化していけばいいのですが、動画内容はもっぱらニュースや議会映像の切り抜き&字幕となっており、これでは石丸市長応援アカウントとなってしまっている状況です。


※なお、ぬっぺふ個人の石丸市長に対する感想は以下の記事と大体同じです。最終的な評価は数年後に見えると思っているので、現状では「手法には怖さがある」とだけ述べておきます。

 

 大衆は小難しい理屈は苦手です。様々な色が混じったまだら模様の世界を、白と黒に分断して理解したがります。そうした思考にのっかって現れるのが【敵】を明確化し、それに立ち向かう主人公という構図を見せつけていく「劇場型政治」というものです。相性の良いやり方としては「改革か否か」といったようにキーワードを1つ抜き出して突きつける「ワンフレーズポリティクス」というものもあります。これらは長々とした議論や長年人類が積み上げてきた政治理念や人権感覚などを抜きに主張を押し通せるため、とくに短時間の動画とは相性がよい。相性がよいということは、見ていて刺激的で面白みが出るということでもあります。つまり、政治系のネタで再生回数を獲得しようと思うならば小難しい理論を説くチャンネル(例えば私のチャンネルですね)よりも上記したような物事を単純化していく形の方が簡単なわけです。極論、この形のチャンネルを運営するためには詳細な政治理念や哲学の勉強は必要ありませんし。


 かけるコスト(この場合お金というよりも予備知識を得るための勉強時間や編集時間ですね)は低く、収益を見込める可能性は高い。小金を稼ぐことが目的であり理念がないのであれば躊躇することはないです。ためしに皆さんも時流にのっている劇場型政治家がいたらその人の言動をおいかけて切り抜いて見て下さい。大好きな趣味を極めて作った動画よりも再生数は稼げるはずです。


 また、低コストで利益が見込める分野には当然事業として携わろうという者も現れます。以下は私が仕事の委託を仲介するサイトで見かけた情報です。


 この事業主は多数のチャンネルを運営しているとのことなので、営利目的なのでしょう。そして、求める方に「他国批判に抵抗のない方」があるということは「他国批判でお金を稼ぐ」というプランがあるのでしょう。しかし、明確な問題意識や下積みとなる積み重ねなく批判のために批判をすることを一般的にヘイトスピーチと呼ぶのです。先程のずんだもん大増殖と同じような動きがヘイトスピーチで行われればどうなるか。大衆とは全体の動きに流される存在です。周囲に自然にヘイトスピーチが増殖している中でそれを危険と思えるかどうか。


 …かつて描かれたSF小説においてディストピアの大半は権力者によって作られた管理社会でした。ですが、今出来つつあるのは「大衆が小金のために自ら進んで大衆を先導していく」という、大衆主導のディストピアなのではないか。ずんだもん動画が増殖したように、やがて政治、教育、経済といった本来多様な議論がなされなければならない分野においても小金のために「受けのいい動画」ばかりが拡大再生産され、やがて人々の思考を変えていくのではないか。そんな怖さを感じた次第です。


5.最後に


 以上、ながながと述べてきました。これは妄想でしょうか。杞憂でしょうか。…それならばそれでいいのです。一番怖いのは、危惧が実現してしまうことなのですから。

 とはいったものの、現状では妄想にも未来予知にもどちらにも転びうる段階なのは確か。動画作成など情報発信をするものは、自身がディストピアを作る片棒を担いでいないかは常に留意する必要はあるのではないかとは思います。貴方が数千円のお金を得るために失うのは、20年後の100万円かもしれませんし、もしかすると子の命かもしれませんので…


 と、今回はここまで。ではまたいずれ!!

 


 

















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