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底つきと対処法 ~GWで考えたこと②~

更新日:6月9日


 こんにちは。元熱血教員で不祥事教員、現ピアサポーターのぬっぺふです 。

引き続き、月に一度の性犯罪加害のグループワークにて気づいたこと考えたことをまとめていこうと思います。


 今回のGWでは古参から新規に至るまで幅広いメンバーがそろい、そのため各自が自身の底つきを経てどのような対策をしているか、が話題に上がることが多かったです。


 そこで、今回は底つきとは何か、そして性犯罪を再発させないために皆がどのような工夫をしているのかについてご紹介しようと思います。


 なお、以前書いた「犯罪的な依存からどう抜け出すか」についても再発防止に向けた動きには触れていますが、今回はより具体的に「どのような工夫をしているか」に焦点を絞ってまとめたいと思います。


 では、行ってみましょう!!

 




 

1.底つきとは何か


 底つきとは、何らかの依存症になっている方が「もう無理だ、やめるか死ぬかしか無いんだ」とどん底を味わうことを指します。一般的には以下のようなケースがあります。


 

①警察沙汰になる

 

 一番多い底つきの形です。痴漢や盗撮といった性犯罪の場合はもれなく被害者がいます。依存している当事者は、その事実を「認知の歪み」によって無かったことにしてしまうことが多いため中々気付きませんが…

 基本的に、どのような形の性犯罪加害にしても捕まっていないのは「運が良かっただけ」です。繰り返していれば必ずボロが出るもの。これはGWでよくでる話題ですが、盗撮や痴漢を働いている人というのは傍から見ると案外すぐわかります


 「そんなことないよ!俺はばれないよううまくやってるね」という人もいるかもしれませんが、その考え自体が既に認知の歪みにはまっているかもしれません。

 共通するのは「ターゲットにそれとなく付きまとう動き」です。そのちょっとした不自然な挙動や、すわった目…視線の違和感。これらはセンサーの鍛えられた人間(=同業者や警察)からすると一目瞭然です。

 

 他にも、「置き撮り」といわれる小型カメラを物陰等に配置して撮影するスタイルの場合は、カメラそのものが発見されれば言い訳はできません。最近は盗撮カメラが無いかを調べる道具もありますし。

 

 なお、案外そのあたりをうまく乗り切れている知性派犯人が警察に捕まるきっかけとなりやすい行動があります。それが、「ネットへのアップ」です。盗撮の写真や動画、痴漢をした相手の姿などをネット上で拡散することにより、「リベンジポルノ防止法」「撮影罪」「名誉棄損」といった根拠に従い警察が動き出すことができるようになります。その場合、アップから始動までタイムラグがあるのが基本です。1年くらいして忘れたころに警察がやってくる…ということも。


 いずれにしても悪事はどこかで表沙汰になるものです。警察が絡んだ形での底つきは報道されデジタルタトゥーとして記録が残ったり、懲戒免職といった処分のために次の就職が難しくなったりとまず良いことはありません。最も避けたいパターンの1つと言ってよいでしょう。


②家族に発覚する、家族を失う


 家族に隠していたものが見つかり、生き方を変えざるを得なくなるパターンです。個人的には①に比べればラッキーなパターンと感じますが、中には発覚したことが底つき体験としては弱い、という人もいます。家族の声に耳を傾けず、専門家の所にもいかず、同じ行為を繰り返す。そうした場合、家族は愛想をつかして去って行ったりすることも。

 なお、警察等に言わずに家族内で解決することを選んだ場合「私の選択は間違っていないか。ちゃんと警察沙汰にして罪を償わせないと本人は変わらないのではないか…」という葛藤を家族が抱えやすいケースでもあります。

 

③それが理由で職を失う


 警察沙汰にはならないまでも、自身の行動や依存が理由で職を失うこともあります。

 例えばアルコール依存であれば仕事中に飲酒してしまったり、飲酒運転で事故に至ってしまうのが典型です。痴漢や盗撮の場合、初犯であったり被害者が社内のみで内々で警察を挟まずに処理されるケースもあります。そうした場合、依願退職といった形で手打ちとなることも。なお、教員と生徒の自由恋愛の中にはこのような形で警察を挟まずに終わらせることもあります。


 

 以上3種を挙げてみましたが、これらが底つきにならない人も当然います。そうした方の場合は本当に生きるか死ぬかの直前までいかないと助けを求めることができません。こうしたケースについても後で言及するとして、とりあえず今は次の話題に進みましょう。


 

2.性犯罪加害回避のための工夫

 

 別の記事でも触れていますが、犯罪的な依存から離れていくためには物理的に遠ざかる面と精神的に遠ざかる面、両方を大切にする必要があります。そのため、GWに参加している人々はそれぞれ方法は違っても基本は以下の①~⑤の内容を生活の中に組み込んでいます


 

①物理的な壁をつくる

 

 最も取り組みやすく、効果も高い対策です。一方で、これはあくまで問題の根本を解決するものではないため「これをやっているから私はもう大丈夫!」というものではないことは理解しておいてください。

痴漢

・電車にのらない

・乗る場合始発など人の居ない時間を選ぶ

・電車に座れない場合は見送る

盗撮

・カメラを持たない(スマホ含む)

 ※特に小型カメラの類は持っているだけで危険

・カメラ起動時に音がなるなど使いにくい設定に変える

共通

・夜間の一人歩きをさける

・外で酒を飲まない

 ※酒が絡んで底つきに至る人は多い

 ※ほかにも、薬の副作用を利用して性欲そのものを抑えるという方法もあります。


 …「毎回電車の指定席に座る!?ブルジョワかよ」という方もいるかもしれませんが、1件の性犯罪では大体「500~600万円」解決までにかかると言われています。また、家族を含め多くの人を傷つけることになることを考えれば、こうした出費を「高い」と一蹴してしまうわけにはいかないのではないでしょうか。


※犯罪を犯した場合、刑法上の罰則とは別に各個別の被害者への賠償が発生します。単純に罰金を支払えば終わりというわけにはいかないのです。裁判が長期化すれば弁護士費用も増えますし、被害者が多ければチリも積もればで多額の賠償金となっていきます。


②依存的な思考回路を使わないようにする

 

 性犯罪を繰り返している時点で、その人の脳には「特殊な回路」が出来てしまっています。よく犯人が述べる言葉に「身体が勝手に動いていた。他のことを考えられなくなった」といったものがありますが、これは「特殊な回路」に電気が走ってしまった状態を表しています。

 回路とはいわば脳の中に作られた水路のようなものです。水が流れれば土はより削れます。削れた水路はより水を流しやすくなり、更に太く、深くなっていきます

 …性犯罪を起こしてしまう人の脳内には、普通ならば結びつかないはずの場所が性欲を刺激する回路になってしまっており、何度も繰り返し使ったためにちょっとやそっとじゃ埋まらなくなっている状態です。


※ある連続暴行犯は、「民家のカーテンが揺れる」のを見ただけで「女性をレイプしたくなる」と述べています。これは異常なことではなく、何らかのきっかけでそうした回路が出来てしまえば誰でも陥る可能性がある状態です。心理学的にはレスポンデント条件付けと言われます。(いわゆるパブロフの犬の実験が有名)


③暇を作らない

 

 性犯罪加害も含め、依存症になっている脳は暇があると気持ちいいものに向かって動き出します。何かで脳の気をそらしていく必要があるわけです。

 無論、仕事をしていようが何だろうがスイッチが入ってしまえば衝動はわきあがる可能性はありますが、少なくともフラフラと自分からスイッチの入りやすい場所へ行ったりすることを避けられる。

 無意識は巧妙です。「あらがえなかった…」という状況に少しずつ自我を誘導します。盗撮でいえば、


①小型カメラを検索する(へえ、本当にあるんだあ)

②小型カメラを購入(買うだけ、使わない!防犯に…)

③使っている所を妄想(考えるだけだよ。思想良心の自由!)

④使える状態でスタンバイ(流石にやらないよ。見つかるかもしれないし…)

⑤絶好のチャンス到来(もはや据え膳食わねば男の恥!)


 と、いった具合。徐々に、しかし確実に、やらざるを得ない状況を自分で作りだしていくのです。

 痴漢や盗撮などの経験者は何となく時間が空いて寂しくなったり気分が沈んだりすると、痴漢や盗撮のチャンスが到来しそうなスポットに散歩にいったりします。でも、出発時は確実にやるつもりという人ばかりでもないのです。

 ともかく、心に空白を作らないことは予防策として大切です。


④なぜそれに頼らざるを得なかったのか、自分の生き方を見直す

 

 本当に不思議なことですが、性犯罪で人生を壊してしまう人は「性犯罪のおかげで社会生活を営めていた」という面があります。

 簡単に言えば仕事や人間関係上で抱える大きな負荷を支えるために「性犯罪」という大きな刺激を利用していたという面です。


※性犯罪を行っている最中の脳は脳内麻薬である「ドーパミン」がドバドバ出ている状態です。ギャンブル含め、依存症になるものというのは大体この「ドーパミン」をドバドバ出してくれる。すると、悩みや不安感がすっと消えていくのです。実際は消えたわけではないのですが、一時的に忘れさせてくれる。また、他の人にはできないことをやったという自負(盗撮であれば他の人が知らない部分を知っている…という感覚も含む)は自尊心を高めてくれます。


 渦中にいるときはそうした事実に気付かず、「それなりに自信もあって仕事も出来ている自分だけど、これだけはやめらんないんだよなあ」と思ってることも。事後依存先を手放す事態になった時に徐々に気付いてくるものです。


 仕事にせよ人間関係にせよ、なぜそこまで大きな刺激でバランスを取れないような状況になってしまっていたのか?それを考えて自分の生き方を見直さない限り、たとえ性犯罪から足を洗えたとしても、また別の刺激に耽溺してしまったり、大きな負荷に耐え切れず心が壊れてしまう結果に終わってしまうこともあります。


 グループワークでもよく出てくるテーマとして「仕事とどう向き合うか」「他者との関係について」といったものがありますが、これらは長期的に問題行動から離れようと思うなら必須の項目なのです。

 大体の場合、性犯罪に向かう人は「真面目」で「他者の目を意識」しており、一見「そんなことをする人に見えない」ものですが、それはその人達が他者に嫌われないため、周囲に受け入れられるためにそうした生き方をしなくてはいけないと思って演じ続けた結果だったりします。その場合、「真面目じゃなきゃいけない」「他者によく思われなくてはいけない」「完璧でなくてはいけない」といった思い込み、またその思い込みを生み出してしまった過去を振り返っていく必要があるのです。


※先述した、「底つき体験が底つきにならない人」についてもこの目線でとらえることが必要です。依存なしには生存なしという状況になってしまっている場合、どんなに底つきをしても依存先から離れられないというケースはあります。特に人生に希望が見いだせない状態だと長期的な展望を描けないために、「今、目の前の生」を生き抜くための依存を辞めるメリットが思い描けません。こうした方の場合は、まず生活保護含む福祉をフル活用して土台が安定して初めてやっと自身が底をついていたことに気が付けるケースもあるようです。



⑤なぜそのジャンルに惹かれたのか自己分析をする


 さて、上記の説明で不足している面があります。それが「なぜその刺激でなくてはならなかったのか」という点。極論、大きな負荷があったとしても、それを「合法的」に処理できているなら問題はないわけです。

 

 スポーツや音楽活動、創作活動といった健全な趣味にはじまりタバコ、アルコール、ギャンブル、風俗といったグレーなものまで。これらを組み合わせて大体の人間はバランスを取っている。では、特定のジャンルに惹かれ人生を踏み外してしまう人はなぜそう出来なかったのか


 多忙から趣味に費やす時間が無かった。休みが安定せず、仲間と疎遠になった。親がアル中だったので、自分は酒は飲みたくなかった。昔から運動が苦手でスポーツにコンプレックスがあった。お金が無くて、できることが限られていた。人に嫌われることが極端に怖く、いい人でいながら欲求を満たしたかった…等々、小さなことかもしれませんが理由を深ぼっていくことが大切となります。

 「なぜ自分がそこにたどり着いたのか」に気付けるか否かは再発防止に影響します。ゆえに、グループワークの中でもこうした分析を皆で行うことは多いです。


※中にはそうした深堀もなく感覚的に再発せずにいける人もいるので、必須とは言いません。ただ、自分の抱えている妖怪がどのように出来上がったものなのかがわかると徐々になだめ方が見えてくるものです。人生歴を振り返ってみることはやって損はないと思います。


 

3.最後に


 グループワークではこうした底つき体験や自身の行っている対処法、なぜ自分が性犯罪に陥ったかという考察を共有する中で、自分ひとりでは気付けなかった視点を得ることができます。

 上記したような知識は書籍でも得ることは出来ますが、グループワークではそれぞれのメンバーがじっくり時間をかけて咀嚼したものを生の言葉で語るため吸収しやすさが段違いです。

 もしこれを読んでいる方で興味の出た方は、是非近隣で開催されているグループワークを探してみてください。

 性犯罪加害にどんぴしゃのグループワークは非常に少数で大都市圏でしか開催されていないことが多いですが、必ずしもどんぴしゃだけが正解ではないと思います。性依存含む依存症、発達障害、愛着障害、ソーシャルスキルトレーニングetc…幅を広げて見ていけば生きにくさを分かち合い前を向くためのワークは色々あります。性犯罪加害にダイレクトアタックは出来なくとも、成育歴から来るコンプレックスや自身の苦手など「なぜ性犯罪加害に至ったのか」を理解するためのアシストとなるものはあるはずです。


 というわけで、私も現在グループワークを企画中です。興味のある方はトップページへ。

ではまたいずれ!

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