top of page

発達障害について②

 



どうも。元熱血教員で不祥事教員、現社会福祉士でピアサポーターのぬっぺふです。


今まで「発達障害について専門的にまとめたページは他にもたくさんあるしー」と思って自分ではまとめてはいなかったのですが、ブログ内で散々「自身の傾向について知ることです」とか言っているわりに「あとは自分で調べてね」はちょいと不誠実かと思い…


 自身の知識の振り返りも兼ねて少し発達障害について概論をしていきたいと思います。




 教員にとって、発達障害の理解(あと今後は愛着障害も)は今後必須事項となってくるはずです。それは自身について知ることで自身の不祥事教員化を防げるということもありますし、生徒に対してその目線を向けることで困った生徒(=困っている生徒)へのアプローチが変わってくる(結果として関わり方もよりソフトなものになりこれも不祥事防止に貢献する)ということがあるかと思います。




 なので、少し長い内容となってしまうかもしれませんが、お付き合い頂ければ幸いです。


では、行ってみましょう。今回は「二次障害」についてです。



 

1.発達障害の二次障害について


 まず、基本事項として以下の図をおさえて下さい。


 

 …前回の最後でも言いましたが、そもそも一次障害の時点で発達障害はミックスジュース状態です。そこに様々な二次障害が追加されていくことで、本人の色はどんどん濁り、最終的には黒に近付いていく


 そのため二次障害を強めてしまった発達障害者と関わる時には、その黒に近い濁りの中からそれぞれの要素を取り出して薄めていき、本来の一次障害の色を把握した上でアプローチをかけていくという順番が基本となります

(具体的にいうと鬱を抱えたADHDであればまず対処すべきは鬱への治療です)


 

2.支援開始の時期と方法


 さて、では具体的な支援をいつどのようにしていくのが理想なのかという話ですが、基本は早期であればあるほど良いとされています。

 本人が自身の特性を理解するとともに、特性に合った環境を準備すれば次の段階へは進みません。いわゆる能力にあった学習と不足するスキルトレーニングを並行する療育の観点で、学校・医療・福祉等の関係機関が協働することがポイントとなります。

 療育を受けさせるほどではないという場合であったとしても、例えば習い事、親戚との交流などを通じて子どもにとって親以外に頼れる大人を複数作っておくだけでも自己肯定感の椅子の足が増え、結果崩れにくくなります。(無論本人が望まない関係を無理に構築するのはNGですが・・・)


 早期の支援においてなにより重要な点は、両親が学習やペアレンツトレーニングを受けることで発達障害について理解を深めることで本人の愛着障害化や二次障害化のリスクを大きく減らすことに繋げられるということです。本人も困っていますが、両親も困っているのです。


 しかし、実際は早期に療育に関わることができるのは極一部。理由は色々と考えられるのですが、


①昨今の子育てが基本各家庭の中において完結しており周囲との比較がしにくいこと

②両親も発達障害傾向があり、適切な対応ができないこと

③自身の子を障害であると受け入れることへの抵抗


などが根底にあるように思われます。


 無論、早期に療育を受けようが受けなかろうが、成育環境によってはのびのび自信をもって成長していくこともあるでしょう。ただし実際は学校生活の段階で何らかの不適応が生じてくることは多いです。こうした際に周囲の大人が威圧的・厳罰的に関わればますます二次障害化を強めてしまいます。

 その子が何に苦しんでいるのか、それを聴き取りや検査を通じてなるべく早く理解していくことが重要です。

 

 ※なお、こうした話は私も教員時代に知識としては聞いたことがあり正直「そうは言っても現場はよう」と感じたのを覚えています。高校の教育困難校などでは実質発達障害や境界知能の子達が多いのですが、学校のシステムが個別のニーズにどこまでも対応する状況を許してはくれません。また、この時期まで放置されていた子ども達ともなると、二次障害も根強く本人の人格形成が歪んでしまっていることも多いです。


 なので、ここで抑えておいてほしいのは「威圧的・厳罰的な指導はダメ」というのは何も生徒を最優先に何でもかんでも要求をきかなくてはならない、というわけではありません。威圧ではなく熱心さで臨み、厳罰ではなく基準通りのペナルティを課し、それらに向き合う中で少しずつ「やればできた」「やったらおわった」「一緒にいてくれた」といった小さな○を積み重ねる。そうした形であれば、長期的には指導は可能です。そしてこうした指導を一人で抱え込めば今度は先生が病んでしまいます。学年内外の様々な先生がそれぞれの関わり方で本人に肯定的に関わることが必要です。

 教育も効率化が叫ばれる時代ではありますが、こうした生徒との関わりに関してだけは効率化のための省略できるものではありません。10数年の対人関係の傷を数分で埋める魔法はないのです。だからこそ教育困難校には優秀な人材が必要ですし、「若い内は経験」と初任の若手だけに任せれば必ず精神をすり減らしてしまいます。力のあるベテランや管理職も含めたチーム運営が必要でしょう。 


 

3.服薬という選択肢について


 学齢期になってくると服薬の選択肢も出てきます。

 「一生薬を飲むことになるのでは…」と抵抗のある方もいるかもしれませんが、服薬はあくまでぶれやすい土台を支えてくれる安定剤。本来もっている土台のぶれやすさを薬で安定させている間に、子どもは多くのことを学習できるようになります。それこそ、自身の特性を踏まえた対処法についても。

 そうして対処法が十分に確立した後であれば、薬がなくなっても大きな問題は起きなくなってきます。

 なぜなら土台を固めている間にその上物の耐震補強がしっかりできるからです。相変わらず土台は揺れることはあっても、上物はその揺れをうまくそらし軽減しダメージを回避できるようになっている。

 そんなこんなでデータの上では子どもの頃に服薬を開始した発達障害児の予後は良好です。むしろ本人の凸を活かして大きな力を発揮することも多いとされています。


 無論薬の効果は人それぞれですし、副作用もありますので手放しですすめるものでもないのですが、選択肢としてはもっておくべきことかと思います。

 

4.二次障害が発現した場合どうするか


 さて、そうした対応が一切されず困難を一身に受け続けた場合はどうなるか。

 先述したように二次障害が始まっていきます。

 ※元の障害の上に別の障害を着ているような状況から「重ね着症候群」ということもある。


 発達障害の支援では段階が進めば進むほどむしろ二次障害への支援が大変になるとされています。なぜならば降り続く雨に対処するために彼らが少ない手札で一生懸命作り上げたバラックこそが二次障害だからです。

 長く強い困難…つまり風雨に晒されれば晒されるだけバラックは補強され続け、構造は複雑に入り組んだものとなっていってしまい、分解&脱出することが難しくなっていってしまう。

 そのため、二次障害が始まっていると思われる子どもへ対応する際にはまず以下の3点を見ていく必要が出てきます。


①誤学習をどう克服するか

(行動上の問題。わざと無視したり逆らったりする反抗挑戦性障害やそれが発展した行為障害等)


②怒りや不安といった感情的な問題はどうか

(うつ病や強迫性障害のなど。なお子どものうつは大人のそれに比べいらだちが顕著に現れます。あるデータではADHDの約45%が鬱病になるという報告もあります)


③被害感や不信感といった認知上の問題は発生しているか

(不登校やひきこもりの大元となっていく部分です。世界に自分一人の感覚。)



 

5.二次障害の中身について


 思春期や青年期を越えると、大きな問題となってくるのが「社会適応」です。基本的に年齢が進むと一次障害の症状は改善することが多いのですが、だからといって彼らの「社会適応」や「QOL=人生の質」の向上には必ずしもつながらない。


 なまじっか普通を装えるようになるからこそ、逆に「本当はできるのにやる気がないんだろう」といった言葉をかけられてしまったり、自身の本心を必要以上に押し殺して生きていかなくてはならないからです


 こうした状況が続くことにより、彼らは自信や自己肯定感を失い、やがて大人や社会への反発を強めていくか、対応できない自分を攻撃しはじめます。

 その結果起き得る問題を以下にいくつか並べてみましょう。


①「大人や社会がむかつくぜ」

 ⇒反抗挑戦性障害とよばれる状況です。わざと権威者の指示に逆らったり挑発的行動をとったりします。これがエスカレートすると具体的な暴力や破壊行為を伴う行為障害へと進化します。


※海外の調査ではADHDの半数が反抗挑戦性障害を合併し、行為障害に関しても学童期の2~4割、思春期の4~5割に見られるとされます。


②「ぼかあダメな奴なんだよ」

 ⇒自信喪失や自己に対する批判を繰り返すことで、不安障害(過度な不安から不眠や体調不良をおこし日常生活に支障をきたす)であったり、強迫性障害(強迫観念にとらわれ特定の行為をやめられなくなる)に繋がりやすくなります。無論、もっとも起きやすいのはうつ病です。


※子どもの鬱病では無力感の他いらだちや落ち着きのなさが顕著となるため気付かれにくい点あり。海外のデータではADHDの45%が鬱病を併発する


③「僕には居場所なんざないのさ」

 ⇒不登校や引きこもりへ。行動力やコミュニケーション能力のある子であれば夜の町などに行きつき非行に走るということも。


④「これやってるとなんかスカッとすんだよね」

 ⇒各種依存症へ。アルコール、薬物といった物質依存の他、万引きギャンブル、性行動といった行為に依存するケースもあります(=行動嗜癖)。犯罪にも繋がりやすいです。


 …どれも大きな問題ですが、一次障害と違い「早期発見・特性把握」によって回避していくことが可能なのは大きな希望です。大切なのは彼らが「自信を失わず」に「やりたいことをみつけられる」こととなっていきます。

 

6.その他の情報

 

 以下ではその他知っておくと役にたつかもしれない情報をまとめておきます。


・性別による違い

男児と女児では女児の方が発達障害の症状が目立たないことが多いが、そのために発見が遅れたり無理な適応を強いられるケースが多い。結果、思春期には孤立に苦しんだり摂食障害を併発することも。

成人期の自己評価、QOLは男性より低く、精神科を受診する率も高い。特に課題となるのが結婚生活におけるDV被害や育児困難。女性社会の荒波でもまれることもあり言語能力は高いことがあり、そこを軸に適応達成は可能。


・大人のADHDとは何か

 子どもの頃から症状はあるが、適切な環境の中問題とみなされず、本人も問題を感じなかったケースが、①家族からの独立②就職③結婚④出産、といった環境の変化によって対処能力を超えてしまい、結果本来もっていたADHD症状が目立つようになっていくのが大人のADHDです。

 発覚するまでの間に自己治療的に対処を繰り返し二次障害となっていることもあります。


・ADHDと併存障害について

 単独…31%

 反抗挑戦性障害併発…40%

 不安・気分障害…38%

 行為障害…14%

 チック…11%

 ※無論3つ以上を併存するケースもある


・ADHDの二次症状リスクについて

 事故率…自転車事故50%↑、救急外来受診33%↑

 自動車事故2-4倍

 家族の問題…両親の離婚あるいは別居3-5倍、兄弟間の喧嘩2-4倍

 学校や職業上の問題…退学処分46%↑退学35%↑

 低い職業的地位多

 社会上の問題…薬物関連リスク2倍(早期発症、中止困難ケース多)

 

    …北海道大学 斉藤貞弥教授講義より拝借。海外のデータとの誤差は勘弁。


・発達障害成人の2つのパターン

 ①児童期に療育や特別支援教育、医療等を経験済み

  ⇒支援は比較的容易。


 ②学校で不適応がありつつもちゃんと対応されていなかった

  ⇒非常に支援困難。

まず診断がむずい。福祉サービスの利用などについても本人・家族の障害受容が進んでないためにスムーズにいかないことが多い。自己肯定感が少なく、傷つきやすいがプライドは高いため関係構築にも時間がかかる。

※先述した教育困難校の生徒はこの域に達していることも多いです。



 

7.まとめ


 発達障害の二次障害、理想は起こさないことです。そのために早期に「特性理解」と「適切な環境を整える」ことが求められます

 そして、これを自身にも当てはめてみましょう。なんだか生き辛い、でも原因がなんだかわからない…

 そうした方は今回の内容を読んでどう思いましたか。発達障害の症状が軽度だった場合、発見が遅れることはよくあることです。また、自己治療として依存や問題行動がおきることもあります。そうした問題に悩んでいる方は、ぜひ自身の半生をもう一度じっくりと掘り起こして頂きたいのです。幼少期のエピソード含め。

 自己の特性把握は一次障害、二次障害を共に軽減するための必須事項です。その掘り起こしによって、対処が見えてくるかもしれませんよ。


 さて、今回はここまで。次回は当事者の声について説明したいと思います。


閲覧数:36回0件のコメント

Comentários


bottom of page