盗撮と万引きは似ている?
- ぬっぺふ
- 2022年9月22日
- 読了時間: 20分

どうも。元熱血教員で不祥事教員、現社会福祉士でピアサポーターのぬっぺふです。
詳しいことは過去のブログを参照して頂ければと思うんですがわたくし盗撮含む性的な問題から懲戒免職となっておりまして。
教員の不祥事の中でもとくに盗撮関係には、「自分がサーチライトになって同じような人を出さないようにしなくてはならんのだ」という勝手な義務感をもっていたりするのです。
ですが、この盗撮という行為、なかなか読み解くのが難しい。
いわゆる性依存の一種として捉えられるとは思うのですが、純粋な性依存だけでは説明がつかないんですね。性的欲求を満たす方法は色々あるのです。合法的な形で。にも関わらずなぜ盗撮だったのか?そこにはその人なりの理由があるのですね。
私自身も自分がなぜそこに惹かれてしまったのかを言葉で整理できるようになるまでにかなりの時間がかかりました。
ところがです。最近、万引き嗜癖の方が書いた本『クレプトマニア・万引き嗜癖からの回復byテレンス・ダリル・シュルマン』を読んでいて、
「あれ、万引き嗜癖の方が抱える感覚って、すごく盗撮の人が抱える感覚と被ってないか?」
と感じたのです。

感覚でいうと、今まで大きな山があって、そこを迂回してでしか自分が盗撮に惹かれる理由を説明できなかったのが、トンネルが通ってしまったような。
世の中には窃視症という言葉はありますが、盗撮嗜癖というものはまだありません。そして盗撮に惹かれてしまうことに性依存的な、依存症的なものがあるのだろうということは多くの方が指摘するところですが、「なぜ盗撮だったのか?」を説明できているかと言われると出来ていない方が多いです。
そこで、今回は参考文献を元に万引き嗜癖の方の特徴を掲げていき、盗撮嗜癖の人との共通点を探っていきたいと思います。
自分を探ることは再犯防止には必須です。すでにやってしまっている方はもちろん、盗撮というジャンルになぜか惹かれてしまうと言った人もぜひご一読下さい。
では、いってみましょう!

1.万引き嗜癖者について(参考文献より)
※まず、これから挙げる万引き嗜癖者とはいわゆる「クレプトマニア(=衝動抑制障害であり、不安を元にした計画されていない衝動から使わないものなどを盗むことが多い)」とは別物であると予め述べておきます。著者の運営する自助グループの参加者からとったデータでは、本物のクレプトマニアは全体の約1パーセントであり、78%はこれから述べる「嗜癖的・強迫的万引き者」であるとしています。
①万引き嗜癖者に共通する世界認識
万引嗜癖者には以下のような世界認識があると著者はいいます。
「人生は不公平なんだ…!」
「誰も私の面倒をみてくれる人はいない!」
「誰も本当は正直なんかじゃないんだ」
「私はこんなに苦しんでいるのだから、何か特別なものを貰える資格があるはずだ」
「いい人は最後にゴールする(はずなのに…)。」
「生きるための十分なお金などどうせこれからもないよ」
「娑婆は犬が犬を食うような世界なんだよ」
「いくら頑張ろうとも事態は解決しないさ」
「そんな世の中だもの、何についても正直に言う価値などない」
…こうした考えは、通常大人になれば「まあそりゃそういうこともあらあな」と思いつつも、一方で「でもそうでもないときもあるさ」と思えるようになるものです。
嗜癖者も、本来は「頑張れば認めてもらえる」「世の中は公平にできているはずだ」「正直はいいことなんだ」といった純な心を持っています。ですが、人生の早期に喪失体験があったり、家族関係の躓きがあったりする中で人生に対しての安心感を失い、自身が前提としていた世界が揺らいでしまうのです。結果、上記のような考えに陥り、それが万引きを後押しする。
著者は「新しい自分になるために、まずこうした考えがどのようにして自分に根付いていったのか」を探る必要性(ライフヒストリーを探る)を訴えます。
※彼が今まで出会ってきた万引き嗜癖者の多くが、人生に対して「奪われてきた」感覚を持っているそうです。この万引き嗜癖の根本にある「奪われてきたものを取り返す」という動きを意識しながら、次を見ていきましょう。
②人が万引きする理由のトップ10
著者は万引きの理由(万引きするようになった理由ではなく、万引きを繰り返す方の)を以下のように述べています。万引きをする人は以下の作用を得たいがために万引きを繰り返しているわけです。
・悲嘆と喪失、その空虚感を埋めるため
・怒り…人生は不公平だという感覚、それを取り返すため/人生を正しいものにするため
・うつから抜け出し、元気をだすため
・不安をなだめるため
・承認…競争して、自分の居場所を割り当てるため
・パワー…自身をコントロールしたり、喪失感や無力感をカバーするため
・退屈…興奮、瀬戸際の中でいきるため
※このタイプはギャンブル嗜癖を持ち合わせることも
・恥…低い自尊心、気を紛らわせ、何かで気持ちよくなるため
・権利…見返り、自分が明け渡したものの埋め合わせをするため
・抵抗…儀式、自分のアイデンティティに参入するため。
③嗜癖万引き者の、従来理解されていなかった特徴
著者は「元来のクレプトマニアと、万引き嗜癖は厳密には違う要素をもっている」と主張しています。例えば、万引き嗜癖者には以下のような特徴があるそうです。
・万引きの背景にあるのはうつや怒り。
※はじめて自助グループにくるメンバーは、抑うつ状態か、怒っている
・盗みの最中に満足感や充実感を感じることはない。安心な場所についてやっと気分が高揚する
※つまりスリルのために盗むのとも違う。何かを得ようとしている
・古典的クレプトマニアと違い、使うつもりのものを盗む。そしてコレクションする。
・自身の怒りや、不公平な人生に対して、タダで物品を集めることで公平さを保とうとしているように感じさせる
・自分の行いが他の人々を害しているということは頭に浮かばない。なぜなら店は人間ではないから。
※無論、実際は多いにその行為は人々を傷つけているのだが…
・他の依存と違い、「成果物」が手に入り手元に残る。
・だが、「成果物」の効果は時とともにおさまり、次の衝動がわいてくる。
・ギャンブル嗜癖との類似性も強く、しばしば万引きを脱しようとする際に転移する
そうした特徴を述べた上で、著者は、『万引きは「潜在的に嗜癖的・強迫的行為であり、回復プログラムが治療・処遇の大切な部分でなければならないもの」』としています。その理由として、
・ネガティブな影響が人生にあるにも関わらず、繰り返す
・コントロールが難しくなり、やめるときには共通する「離脱症状」がある
※抑うつ、とらわれ、不安、とげとげしさ等
・ほとんどの人は怒りから万引きするが、怒りの問題が解決されるだけでは万引きは終わらない
※一旦嗜癖に陥ったら、認知行動的な調整が必須となる。
・リカバリーグループが非常に有効。長期的にサポートをしていくことで潜在していた課題が特定でき、解決に繋がっていく。
・回復は、成長→自尊心の再構築→自分の敗北パターンに気付く→再発の減少 という流れを呈する
ということを挙げています。他、面白いデータもあります。著者が実施しているグループ内で調査した結果です。
・男35:女65
・頻度は毎日が25%。週1が4割。月1が1割。残りの5%が一回。
・3割に、他の嗜癖がある
・5割が共依存的
※特にこうした特徴は万引きを辞めようとするときに姿をみせてくる
・7割が万引きに恥の意識をもっている
・7割がうつや不安でくるしむ
・嗜癖的な窃盗者の多くは基本は世話好きで共依存の傾向あり。
…著者は言います。
「『誠実さはそれ自身が報酬』とは古い格言であり、著者はこれを信じて育ってきた。それから実際はそうでもないことを考え始めた。誠実であれば女の子の心をつかむとは限らないこともわかってきた。
そんななか、著者は誠実であることをほぼあきらめた。しかし、万引きの事後は何等かの罪悪感を感じていたし、、その他のほとんどの方面では正直であり続けた。
『めったに個人からは盗まず、もっぱら店で、職場で直接困る人は誰もいない』と言い訳しながら盗んでいた…」
2.万引き嗜癖者について(ぬっぺふの整理)
いかがでしたか。では次に、参考文献にて著者が述べていた内容を元に、万引き嗜癖者の像を紡いでみようと思います。
①万引きをすることは「自身に欠ける何か」を埋めようとする行為である点
様々な例がありましたが、不安といった心の穴への対処であったり、自分にない力を感じ、自己コントロールを手にいれるため、というものもありました。つまり、万引きは自身を苦しめる何かに対しての「対処法」としての側面があるわけです。
②万引きは自身の失った何かを「取り返す」行為である点
万引きの理由10選の中に、「権利」というものが掲げられていました。自分が明け渡したものの埋め合わせ、というものです。今回は割愛した内容の中に、著者が幼少期にスケートボード等を盗まれており、そのせいか盗む対象もスケートボードになることが多かったと述べています。つまり、万引きは「社会から奪われた何か」もしくは「具体的に奪われた何か」を取り戻したいという感覚が根本にあることを示唆しています。
③こうした行為の背景には「怒りやうつ」がある
彼らの多くは本当は「頑張っているものは救われるべきだ」と信じているにも関わらず、「世の中は不公平でみんな自分をちゃんと見てはくれない。俺は頑張っているけれど、いい目を見ていない」といった社会への怒りや、ずっとしたいことを我慢させられてきたという抑うつを抱えていることが挙げられていました。彼らは本当は「頑張れば認められ、公平に扱われ、安心できる世界」を求めている。ですが、なんらかの原因でその感覚が崩れてしまったがために被害者として自身をとらえ、自身の行為に対して「権利」を感じてしまう。
④多くが世話好きで、共依存的傾向あり
彼らは安心したい。認められたい。そしてどこかでは「人に親切にすれば親切にされる」といった公平性を信じたい。結果、対人関係においては自己主張を抑えてでも世話をしてしまう…ギブをくり返す傾向があります。それはその見返りとしての承認を求めることでもあり、共依存とよばれる体質です。
共依存の人は仕事等においても過剰に抱え込んでしまい、余計疲労を蓄えていってしまう面をもっている他、他の嗜癖にも染まりやすい性質をもっています。
⑤万引き以外の点では正直でありつづける
これは著者が自身で述べているだけですが、著作の中で紹介された他のケースを見るに万引き嗜癖者にある程度共通する性質なのではないかと思います。なぜなら、彼らの求める「安心」「承認」「権利」等は一般的には正直じゃないと与えられないと教わってくるものだからです。様々な体験により「そんなに世の中は綺麗ごとでは出来ていないんだ」ということにおののきながらも、体にしみついている。いい人でいたいとどこかで思っている。
⑥万引きが人を傷つけているという実感がない。
矛盾するようですが、いい人でいたい人が万引きをする。なぜなら万引きは彼らが思いついた対処法の中で「人を傷つけるもの」として認識されていないためです。彼らは抑うつします。自己主張をせず、ギブに徹します。表だって人を傷つけられる人は、そうした傾向は持たないものです。でも、結果的には多くの人を傷つけている。自分も含めて。
⑦万引きにより「成果物」が手に入り、それはしばらくの間自分をささえてくれる
他の嗜癖と違い、万引きは「成果物」が残る。つまり、それを眺めることで嗜癖による効果を再確認できます。また、「タダでいいものを手に入れられた」という感覚は失った公平さを取り戻した気分にもさせてくれます。
⑧しかし「成果物」の効果はやがてなくなる
あらゆる依存に言えることですが、効果はやがて薄まるのです。結果、次の「成果物」を求めて動かなくてはならなくなります。やがて彼らはその「成果物」をコレクションするか、他者にプレゼントすることなどで自身の安定に繋げます。こうなるともう簡単には後戻りできません。
⑨一度嗜癖に発展すると、根本の怒りやうつが癒されたとしても行動は残る
なぜなら、一度万引きという行為を行い、それが嗜癖と化してしまった場合、万引きを引き起こす根本となった感情が消化されたとしても「万引きは止まない」からです。回数は明らかにへりますが、一度できた脳回路を完璧に埋めることはできません。
最初のうちや成果物の効果があるうちは「自分の意志で万引きをやる、やらないをコントロールできる」と思いたがるのですが、実際は万引きに人生の主導権をにぎられてしまっているわけです。
いかがでしょうか。では続いて、上記の像をもとに盗撮嗜癖者の姿を作っていきたいと思います。
3.万引き嗜癖者の特徴をもとに盗撮嗜癖者の像を作ってみる
…2で扱った9つの項目をそのまま移植してみたところ、驚くほど自分やグループワークに参加している他の利用者と共通するので驚いた次第です。とりあえずちょいと見てみて下さい。
①盗撮をすることは「自身に欠ける何か」を埋めようとする行為である点
グループワークに参加するようになった元盗撮者は当初自覚しませんが、のちに他者が持っていないものをもっているという「優越感」、他者に対しての「支配感」、そして不安や悩みといった心の隙間が空いている時に行為が頻発していたことに気付いていきます。ここでも、自分が表向き普通に生きていくための「対処法」として嗜癖が利用されている。
②盗撮は自身の失った何かを「取り返す」行為である点
盗撮を行う人は基本的に「高学歴」「高所得」「社会的地位はそれなりにある」「人あたりはいい」といった特徴を持っていることが多いことが知られています。金銭的にも満たされているし、社会的地位もあるのに、何を失ったと思っているのでしょう?ここに関しては③で考察したいと思います。
③こうした行為の背景には「怒りやうつ」がある
考えてみましょう。なぜ盗撮者は「高学歴」で「高所得」、「社会的地位はそれなりにある」ことが多いのでしょう?…それは盗撮者に「勤勉」な方が多いからです。では、勤勉なのになぜ「失った感覚」を持つというのでしょうか。「怒りやうつ」に繋がるのでしょうか。
…自分勝手な話なのですが、グループワークなどで話を聞いていると以下のような面が見えてきます。
盗撮犯となる人々は本当は「もっと自分本位に生きたかった」のです。ですが、生来の臆病さや、思春期の失敗から(ここに発達障害や軽度知的障害等が関わっていることも多い印象です)か、それを抑圧して勤勉に励むことで今の地位にたどり着く。でも、自分の中ではとても頑張っているものの、あくまで「出来ること」を積み上げてきただけなので「自分に満足できない」。自信がない。偽物の自分を生きている感覚を持っている人も。「俺は頑張っているけれど、いい目をみていない」という感覚はこうした中で生まれてきます。
世の中は不合理です。頑張れば報われるわけでもないし、真面目でいれば都合よく使われるだけという面もあります。
…彼らは本質的には「頑張っているものは救われるべきだ」と思っているからこそ、その不合理が見過ごせない。そして、外面が良い分たけその「怒りやうつ」を素直に表に出せない。
これは女性に対しての態度でも同じです。彼らは正直言えばもてたい。ですが、ただ真面目に勤勉な男はもてないものです(特に学生中は)。彼らはそうした「誰よりも頑張っていたのに女性に相手にされなかった」という学生のようなこじらせを根本に傷としてもっていたりする。
理屈の上ではこうした感情は自分勝手なものと気付いています。ですが、無意識はそうした感情を見逃さない。結果、彼らは「人あたりのいい人」でいながら、自分を正当に扱ってくれない社会や場合によっては女性への怒りを、不満を、「盗撮」という方法で解消することに惹かれていく。
※DV男性も性犯罪加害者とにたパーソナリティを持つことは有名なのですが彼らにとってはこの「万引き」や「盗撮」が「DV」に置き換わるのです。
ちなみに、「自分が万引き嗜癖となった理由の1つ頑張っているのに女性にもてなかったこと」を掲げている方がいて、何をかくそう今回の参考文献の著者、テレンス・ダリル・シュルマンその人です。こうした思春期に始まる異性へのコンプレックスは、様々な問題の根となる面は軽視してはいけないのでしょう。
※実際、ハヴィガーストという学者は青年期に身に付けるべき発達課題(それを手に入れないと安定した自我を作れない重要な課題)として、男女両性の友人との交流及び成熟した人間関係の構築を掲げています。
④多くが世話好きで、共依存的傾向あり
彼らは安心したい。認められたい。そしてどこかでは「人に親切にすれば親切にされる」といった公平性を信じたい。結果、対人関係においては自己主張を抑えてでも世話をしてしまう…ギブをくり返す傾向があります。これは盗撮犯にも見られる特徴です。
⑤盗撮以外の点では正直でありつづける
ここに関しても同様です。「そんなに世の中は綺麗ごとでは出来ていないんだ」ということにおののきながらも、体にしみついている。いい人でいたいとどこかで思っている。そうじゃなきゃ、それなりの地位には立っていません。
⑥盗撮が人を傷つけているという実感がない。
万引きと同様です。盗撮は彼らが思いついた対処法の中で「人を傷つけるもの」として認識されていないのです。彼らは抑うつし、自己主張をせず、ギブに徹しています。表だって八つ当たりするなど人を傷つけることはできない。罪悪感はあります。でも彼らはこう言い訳する。「盗撮は相手にばれなければ犠牲者のいない犯罪だ」と。
⑦盗撮により「成果物」が手に入り、それはしばらくの間自分をささえてくれる
万引き同様、盗撮も「成果物」が残ります。つまり、それを眺めることで嗜癖による効果を再確認できます。また、先述したように「タダでいいものを手に入れられた」という感覚は失った公平さを取り戻した気分にもさせてくれます。
⑧しかし「成果物」の効果はやがてなくなる
そして、成果物の効果はやがて薄まります。結果、次の「成果物」を求めて動かなくてはならなくなります。やがて彼らはその「成果物」をコレクションするか、他者にプレゼント(ネット上にアップする等)することで自身の安定に繋げます。こうなるともう後戻りできません。
…なぜ盗撮犯が自分の作品をネット上にアップするのか?それは彼らが真に求めていることは「成果物」そのものではなく、「(自分勝手ながら)怒りや抑うつの発散」であり、それらは「承認」されることの代替でもあるからです。
⑨一度嗜癖に発展すると、根本の怒りやうつが癒されたとしても行動は残る
盗撮は万引き同様、脳内麻薬がどばどば出る行為です。嗜癖と化してしまった場合、根本となった感情が消化されたとしても「盗撮は止まらない」。やはり、一度できた脳回路を完璧に埋めることはできないのです。万引き同様、(無意識とはいえ)最初は自分をコントロールするために盗撮を利用していたはずなのに、気が付くと盗撮にコントロールされてしまっている。
…いかがでしょうか。両者の間の共通点が見えてきませんか。
ちなみに、盗撮嗜癖は男性が多いですが、万引き嗜癖は女性が多いです。
そして、男性がポルノを見るときの興奮と女性の買い物をするときの興奮は似ているものであるという情報もあります(言われてみれば、男性向けのラブコメなどでは女性の年齢、身長、体重、スリーサイズなどを表記して次々とカタログのように並べる傾向がありますね)。
もしそれが本当だとすれば、その2つの興奮をタダでてにいれ、「何かをとりかえす」この2つの嗜癖はやはり似た者の合わせ鏡だったりするのかもしれません。
4.回復できるのか
盗撮は性依存の一種ではあるのだと思います。行動嗜癖です。ですが、他の多くの嗜癖と違い、「犠牲者が必要」な嗜癖です。万引きも同様。
当然、まったく別の形(たとえば思春期の好奇心)から万引きや盗撮を行ってしまう人もいるかと思います。とくに盗撮に関して言えば、昨今はスマホにカメラが標準搭載されているばかりか通販で簡単に小型カメラが手に入る時代。興味本位で使ってしまう人も現れて当然です。
ですが、大体の人は1度痛い目を見ればやめることができるものです。なぜなら、わりにあわないから。
しかし、先述したような世界観、人生観をもっており、内部に鬱屈した感情を燃やしている場合、1度痛い目を見たとしても再度同じことを繰り返します。それは、根本となる原因が残っているからという面もありますし、脳内に回路が形成されてしまっているからという面もあります。こうなってしまうと、一人での回復は難しい。
本来は痛い目を見る前に相談できるのが一番です。ですが、万引き・盗撮は先述したように犠牲者のいる嗜癖。犯罪です。他の嗜癖以上に、他者に打ち明けるには抵抗が生じます。また、自分自身をなんとかコントロールし、生きていくための対処法でもあるために、どんなに表面上「やめたい」「やめなきゃ」といっても、本心ではそれを手放すことを望んでいないこともあります。
つまり、この2つの嗜癖は共に「底付き体験(警察による逮捕や離婚など人生の危機的状況)」に至るまで助けを求めることができない性質があるのです。
…ですが、逆に言えば早期に「この怪物は自分一人では対処できないものなんだ」という認識を彼らが抱くことができれば。すなわちよりこうした嗜癖への理解やサポートグループの拡大が進めば、「底付き体験」に至る前に彼らを回復へ向かわせることができるようになります。再発を防止するために必要なのは厳罰と罵倒ではなく、知識です。自身がどのような状態になってしまっているのか、その根本に横たわるものは何なのか、回復にむけて何をすべきなのか、という。
これらの知識を蓄え、ストレス解消法や脳の使い方を以前と変えていくことによって、万引きも盗撮も「回復」します。
もう一度いいます。「回復」します。
よく性犯罪は再犯が多いといいます。それは、性犯罪者だから再犯が多いのではありません。彼らを回復に向かわせるための専門家、グループ、知識、見解、それらが不足しているからです。万引きも同様です。これらの分野はこれからより沢山の専門家やサポートグループが必要な分野となってくるでしょう。
5.おわりに
さて、今回は万引き嗜癖と盗撮嗜癖の共通点を挙げさせていただきました。
ストレスは促進する材料、根本に横たわっているのは公平ではない社会に対しての「怒りや抑うつ」であり、行為は自身に力をくれ、社会の公平さを取り戻させてくれる方法なのだ、という著者の視点はまさに自身の感じていた埋まらないパズルのピースをピタリとはめてくれたように感じました。以前から私は「不遇感」が不祥事につながるきっかけであると感じていたのですが、今回の内容はまさにその「不遇感」こそが嗜癖の背景にいるんだよというものでしたので…
さて。我々は怒りを表に出さないよう繰り返し言われており、そうするように実際務めている方が殆どでしょう。とくに教員のような社会的地位のある方であればなおさらです。
ですが、ため込んだ怒りは、やはり出口を求めます。
解消されなかったストレスは怒りの動きを促進します。私の場合は怒りは盗撮という出口から噴出し、著者は万引きを通じて噴出しました。さあ、あなたの場合はどこでしょうか?…ねがわくばその噴出口が合法的なものであることを祈っておりますが、本当に大切なのはそのガスのように吹き出る「怒りや抑うつ」がどのように発生しているのかを把握することです。
犯罪者になるかどうかはほんのささいなきっかけからです。そしてそのきっかけをあなたが踏まないとは言い切れない。
もし気がかりなことなどあった場合は私でもいいですし、どなたかに助けをもとめることから始めて下さい。「もしかして」と思っている頃なら、まだ引き返せます。くれぐれもご自愛ください。
…というわけで、今回はこのへんで。ではまたいずれ!
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